　　　　　　　　　　　　　電気工学科　昭和３４年卒業　松　村　和　明

１．武田神社参道の桜
　　　もう４５年も昔のことです。山梨梨大学に入学の春、真っ先に訪れたのが武田神社
　　でした。悲運の名将と言われる武田信玄の「躑躅ケ崎の館跡」を訪ねて、信玄公の
　　遺徳を偲び、遠く戦国の世に想いを馳せました。この時、大学の正門から北に上がる
　　約１キロの参道は桜が満開で、初見参の甲府の街に春のうららかな暖かさを感じ、甲
　　府が一遍に好きになりました。
　　　武田神社祭は、毎年４月１２日に行われ、この満開の桜並木の中を武田信玄が率い
　　る「武田二十四将騎馬行列」が華やかに進み、それは見事なもので、４００年前の戦
　　国絵巻に酔いしれました。

２．日本桜番付
　　　少し古い資料ですが、「日本桜番付（平成２年春場所）」というものがあるので、
　　主な所だけ紹介します。

	東	西
横　　　綱	弘前公園（青森）	吉野山　（奈良）
張出横綱	角　　　館（秋田）
大　　　関	松前公園（北海道）	姫路城　（兵庫）
張出大関	高遠城址（長野）
関　　　脇	久遠寺（山梨）	千光寺公園（広島）
張出関脇		平安神宮（京都）
小　　　結	大沢温泉（静岡）	鶴山公園（岡山）
張出小結		錦帯橋　（山口）
前　　　頭	狭山湖　（埼玉）	五月山公園（大阪）
同	伊豆高原（静岡）	仁和寺（京都）
同	新宿御苑（東京）	ＰＬランド（大阪）
同	奥多摩湖（東京）	奈良公園（奈良）
同	五稜郭公園（北海道）	長谷寺（奈良）
同	隅田公園（東京）	大阪城公園（大阪）
同	兼六園　（石川）	通り抜け（大阪）
同	懐古園　（長野）	上野公園（三重）
同	小田原城址（神奈川）	彦根城　（滋賀）
同	上野公園（東京）	円山公園　（京都）
同	犬山公園（愛知）	明石公園（兵庫）

３．関西・近畿の桜
　　　桜は日本を代表する花であり、私の一番好きな花です。毎年、関西・近畿の桜の名所
　　を訪れるのが、楽しみの一つです。私がこの二十年くらいの間に各地の桜名所を見物し
　　て、心に残った所を紹介します。もう間もなく桜の季節です。会員の皆さん、是非ご家
　　族で訪れて下さい。人生に潤いを感じることと思います。
　（１）京都の桜
　　　①平安神宮のしだれ桜（４月上旬）
　　　　神苑にあり、花はピンク色で、とても優美。平安神宮の華麗な建築と池を背景に、
　　　　枝の長いこのしだれ桜は一段と華やかにしかも可憐にみえる。
　　　②円山公園の夜桜（４月上旬）
　　　　公園の中央に、見事なしだれ桜の大樹がある。桜守によって蘇生した話は有名であ
　　　　り、夜桜は特に美しい。四方八方どちらから見ても貫禄があり、ほれぼれする。
　　　③哲学の道の桜（４月上旬）
　　　　銀閣寺から疎水に沿って、哲学の道があり、疎水の両側に桜並木が２キロほど続い
　　　　ている。「人生いかに生くべきか」を考えながら、そぞろ歩きもまた一興。
　　　④清水寺の夜桜（４月上旬）
　　　　清水の舞台の周りは桜ともみじが植えられており、春には一斉に桜が咲く。清水の
　　　　舞台に桜はよく似合い、昼も良いが夜桜はもっと良い。
　　　⑤仁和寺の御室桜（４月中旬）
　　　　八重桜系の御室の桜はほかよりも遅れて咲く。小振りの桜の木がたくさんあって、
　　　　庭園を埋め尽くし、京都の人はこの春最後の桜に名残を惜しんで慈しむ。
　　　⑥醍醐寺のしだれ桜（４月上旬）
　　　　秀吉の「醍醐の花見」で有名であり、満開の花の中を秀吉が淀君などの美しい側室
　　　　を従えて「花見行列」がきらびやかに進む。桃山時代の花見の再現である。
　（２）滋賀の桜
　　　　　①彦根城の桜（４月上旬）
　　　　井伊大老の居城、国宝彦根城はどの季節に訪れても素晴らしいが、桜の頃が最高で
　　　　ある。広い城内は桜に埋まり、天守閣は桜の上に浮かび、堀の水面に花びらが散る。
　　　②長等公園・三井寺の桜（４月上旬）
　　　　大津市の琵琶湖畔にあって、京都・山科に流れる疎水の両側に桜並木が三井寺・観
　　　　音堂を背景にのどかに咲いている。三井寺境内の桜も散策しながら眺めると良い。
　　　③海津大崎の桜（４月中旬）
　　　　琵琶湖の西北、竹生島を眺める湖畔が海津大崎であり、山を縫って湖岸道路がつら
　　　なり、一面に桜が満開。湖面の群青に桜は一層映えて、遙かに竹生島がかすむ。
　（３）奈良の桜
　　①吉野山　日本一の桜（４月上旬から下旬）
　　　　吉野山は日本一の桜の名所として有名。細長い峰々、入り組んだ谷間は桜で埋まっ
　　　　ている。「下千本」「中千本」「上千本」と順次開花していき、「奥千本」では五
　　　　月に入っても花が残っている。大半は自生の山桜で実際の本数は六万本と言われて
　　　　いる。吉野山は「義経と静御前との別れ」や「後醍醐天皇の南朝哀史」など花の陰
　　　　に歴史が隠されている。電車で行って、山腹の民宿で一泊し、ゆっくり周ることを
　　　　お薦め。
　　　②長谷寺（４月上旬）
　　　　長谷寺はボタンで有名であるが、桜もなかなかであり、広大な山腹に広がる境内の
　　　　桜は周りの山々や堂塔の風景によく合って、眺望と桜のセットで楽しめる。

　（４）大阪の桜
　　　①大阪造幣局の通り抜けの桜（４月上旬）
　　　　全長６０ｍほどの道の両側にいろいろな種類のサトザクラが４００本程度あり、花
　　　　の時期だけ「通り抜け」ができる。人気があって大勢の人で賑わう。
　　　②大阪城公園の桜（４月上旬）
　　　　大阪城の巨大な石垣や内堀、重厚な天守閣を背景に広い公園のあちこちに桜があり、
　　　　いろいろな場所から楽しめる。明るく開放的な感じが良い。

（５）兵庫、三重の桜
　　　①姫路城の桜（４月上旬）
　　　　国宝姫路城と春爛漫の桜は、まさに「世界歴史遺産」である。白鷺城といわれる壮
　　　　大で端正な美しい城に、城内を埋め尽くした満開の桜はまばゆいばかりである。い
　　　　つまで見ていても見飽きることなく、すべてに魅了される。
　　 ②伊賀上野城公園の桜（４月上旬）
　　　　伊賀上野の工場に１５年間勤務していたので、毎年訪れた。天守閣を囲んでのんび
　　　　りと花見の宴としゃれこみ、地酒の杯を重ねれば、人生しあわせ、天下泰平である。

４．イギリスの桜
　　　　１６年も前になるが、１９８４年４月初めにエジプトからの帰途、飛行機の都合で
　　ロンドンに一日滞在した。その時、偶然に訪れたバッキンガム宮殿は桜が満開。見事に
　　咲き誇る異国の桜は派手な衛兵の制服とよく調和して、健気に頑張っていた。

５．故郷の桜、高遠城の小彼岸桜（４月中旬）
　　　生まれ故郷伊那谷の桜は、なんといっても高遠城址の桜である。小高い山上にある高
　　遠城は戦国時代は甲斐の武田方で、織田の大軍の猛攻を、武田勝頼の弟である守将仁科
　　五郎信盛がわずか３００の城兵で防戦したが、衆寡適せず落城し、自刃した。小彼岸桜
　　はうす紅色で、清楚な雰囲気をもち、残雪の中央アルプスに映えて、それは美しい。ま
　　た今は亡き祖父や父と共に訪れており、懐かしく在りし日が偲ばれる。高遠城址の桜は
　　幼き頃の追憶と望郷の想いをかきたて、いつ迄も記憶に残って放れない。

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